子どもが楽しみながら自分の「好き」を見つけられる幼児教室を運営。NPO法人FLOW代表×
統括マネージャーの思い。
代表の花城 康貴(左) と、統括マネージャーの花城 律子(右)
「自分を信じ、自分自身を立て直す力のある人」
勉強ができる人とは?という問いに、代表の花城康貴はそう答えます。
2016年に、幼児教室をスタート。妻である花城律子が総括マネージャーを務め、関西圏を中心に教室を広げてきました。法人を育ててきた2人が、設立の経緯や幼児教室を運営する中で大切にしていること、保護者の方への思いを語ります。
小学生の頃から勉強が嫌いな高校生との出会いで「教育」の重要性を感じた
ーー 自身で教育事業を始めようと思ったきっかけを教えてください。
花城康貴(以下、代表):私は大学卒業後、数年間企業での経験を積んでから家業の飲食店を継ぎました。そこでアルバイトとして働いていた高校生の女の子との出会いが、教育への関心を強めるきっかけになりました。
彼女は小学生のときから勉強が嫌いで、簡単な計算にも戸惑ってしまうことがありました。自分に自信を持つことができず、高校生になった当時もやりたいことが見つけられないようでした。
一方で私自身は、自分の子どもに対して無意識のうちに幼児教育をしていましたし、私にとってはそれが普通でした。彼女と自分が受けてきた教育の違いを感じ、「幼い頃から受けてきた教育には大きな影響があったんだ」と気づいたんです。
勉強が嫌いで基礎的な学習が理解できないまま大人になることで、その子自身の選択肢を狭めてしまっているんじゃないかと思いました。彼女との出会いが「自分の使命ってなんだろう?」と考えるきっかけにもなりました。
我が子を幼児教室に通わせた経験から、法人設立を決意
花城律子(以下、マネ):ちょうどその頃、私たちには子どもが2人いて、長女を0歳7ヶ月から幼児教室に通わせていました。小さいうちから脳を使ったり手を動かしたりする経験は大切だと思っていたんです。
幼児教室の先生からは、体の動かし方や声のかけ方まで教えてもらいました。私自身が教室の先生から学んだことで子育てが楽になった経験があり、それを幼い子どもを持つ多くのお父さん、お母さんに伝えたい気持ちが大きくなりました。
当時は仕事から離れていましたが、社会との関わりは持ち続けたいとも思っていたので、2016年に2人で新しい事業を始めることになりました。
代表:最初につくったのは運動教室「忍者ナイン」と知育教室「チャイルド・アイズ」です。スタートから2年後、2018年にNPO法人化し、さらに英語教室「レプトン」、次世代リーダー育成プログラム「ネクストリーダーアカデミー」、プログラミング教室「HALLO」の3教室を開講しました。
自立して生きられるスキルを身につける場を
ーー なぜさまざまな内容の教室を増やしていったのでしょうか?
代表:子ども達には「将来、稼げる人であってほしい」という思いがあります。勉強するのは大学に行くためだけではなく、飯が食えるようになるためだと思ってます。
保護者としても、自分の子どもが自立して生きていけるかは一番気にするところだと思います。あわよくば、子ども自身の好きな仕事についてくれたら、保護者としては嬉しいですよね。
そのためには自分でいろんなスキルを身につける必要があるので、教室ではその中でもみんなにとって必要だろうと思えるものを提供したいと思い、複数の教室を運営しています。
もう1つの理由として、実は「保護者の方の負担を少しでも減らしたい」という思いがあります。私自身、育児を経験する中で働きながら子どもの習い事の送迎をすることの大変さを痛感しました。
夕方は送迎時間の合間を縫って、「今だ!」という感じで車内でなんとか仕事を進めるような感じでした。分刻みで動いていましたし、まさに目が回るような状態でした。送迎って想像以上に大変なんです。
そんな負担を少しでも減らせるように、箕面教室では複数の教室を1箇所にまとめて、移動することなく運動や知育、英語やプログラミングなどの授業が受けられるようになっています。それによって、保護者の方の時間が少しでも増えたらいいなと思っています。
大切にしているのは、子ども自身の「楽しさ」と「没頭」
ーー 教室は、どのような雰囲気なのでしょうか?
マネ:例えば、椅子に座っているときでも目の前にあるものへの興味が強くなると、前のめりになってお尻が浮くことってありますよね。「座っていないとダメ」ではなく、その子の興味が向いているのであればそれで良しとする雰囲気があります。
一方で、小学校受験の教室となると、きちんと椅子に座って鉛筆を持って問題を解くことや、先生の指示通りに行動する姿勢が求められるので、そこはメリハリをつけて指導しています。何を目的にしている時間なのかを明確にしていますね。
知育教室では、好きなことをただやっているのではなく、どの時間でもねらいを設定しています。子どもがねらいとは全然違うことをしていたら、レッスンの中身に興味が持てるように先生が工夫をしたり、声かけをしたりしています。
座って鉛筆を持つことを絶対としていないのが、知育教室の特徴だと思います。
代表:そうですね。基本的に「楽しいと思うことは、やってみよう!」をモットーにしています。私自身、幼少期を思い返すと我慢することが一番つらかったので、うちの教室では何かを我慢することは基本的にありません。
ーー 保護者の方と関わるときに、大切にしていることはありますか?
マネ:その子なりに成長しているところは必ずあるので、保護者の方には、その部分をお伝えするようにしています。他の子と比較するのではなく、お父さんとお母さんが今のその子を受容できるようにサポートしていくことが、私たちが教室を運営する価値なのかなと思います。
どうしてもお母さんやお父さんは、子どもの今の状態に意識が向いてしまうんですよね。「お友達はこれが出来ているのに、うちの子はできない」とか「お友達はひらがなが書けるのに、うちの子は書けない」とか。
短期的に見ると心配なことはあると思いますが、それだとどうしても視点が狭くなってしまい、「あなたはこれができない」というメッセージが子どもに伝わってしまいます。
集中して座れない子は、いろんなことに興味があって好奇心旺盛と捉えたり、エネルギーがあり余っていると捉えたりすることができます。数年後の未来を見たときに、いろんなことに関心があるのは喜ばしいことなんですよね。
代表:苦手なことがあっても、子ども自身が「やればできるんじゃないの?」と思える力は大切だと思っています。そういう気持ちがないと、そもそもチャレンジすることもできないですから。
「勉強ができる人」とは、成績が悪くても自分で立て直せる力のある人だと思っています。「“今は”できないけど、やればできる」と自分自身に対して思える人。テストでいい点数が取れるとか、運動できるとか、そういうところではないですね。
自分の「好き」と、社会課題をかけ合わせる
ーー 今、特に力を入れていることはありますか?
代表:毎月私が講師となって開講している次世代リーダー育成プログラム「ネクストリーダーアカデミー(以下、NLA)」です。子ども時代に、社会課題をビジネス視点で考えることを彼らに教えたいと思いスタートしました。
ネクストリーダーというのは、社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)のことです。プログラムの中では時事的な問題を取り上げ、プレゼンテーションの訓練をします。
保護者の方から「うちの子はしゃべるのが苦手なので参加は難しいと思います」と言われることもありますが、そういう子にこそ参加してもらいたいと思っています。人前で話すことは、自分の自信にも繋がります。
対象は基本的に小学生ですが、中には年長さんもいます。「プレゼンをやります」というとハードルが高いように感じますが、意外と大丈夫なものなんです。保護者の方が想像するようなプレゼンとはちょっと違うと思います。
ーー どのようなプレゼンなのでしょうか?
代表:何も持たずに喋れるような子もいますが、多くの場合は事前に用意した原稿を持ってそれを読むことから始めます。講座の中では、その子が最終的に何も見なくてもプレゼンができるように段階を追って練習していきます。
原稿を読みながらのプレゼンではありますが、ちょっと聞こえが良いようなフォーマットにしてあるんです。プレゼンが苦手な子もそれなりに聞こえるような仕組みになっている。
最初はそのフォーマットに自分なりの考えを書き込み、プレゼンで読み上げるだけで良いんです。これをどんどん積み重ねていきます。
その結果「私、結構しゃべれてるじゃん!」と思ってもらえたら、こっちのもん。少しずつ原稿を読まなくても話せるようになっていきます。
遊びや体験を通して、成功体験を積んでほしい
ーー これから新たに始めたいことはありますか?
代表:すでにやり始めていることでもあるんですが、大きな公園で外遊びをする時間をもっとつくりたいと思っています。最近は子ども達だけで外で遊ぶ機会が減っていると思うので、足腰が立たなくなるくらい思いっきり遊ぶ経験ができるといい。
今考えているのは、遊ぶための合宿です。2020年に新型コロナウイルスが流行し始めた直後、教室を閉じた期間がありました。再開したら子ども達はみんな大はしゃぎで、それまで溜まっていたエネルギーを一気に発散しているような感じでした。
全身を使ってクタクタになるような合宿を、小豆島や淡路島に行ってやりたいですね。ペンとノートではなく、水筒とゴーグルを持って集合する。
私自身は幼い頃、叔父が夜釣りに連れて行ってくれたことをよく思い出します。夜中の12時くらいに迎えに来てくれて、夜中釣りをして明け方に帰る。
叔父からするとただの暇つぶしだったんでしょうけど、当時の私にとっては最高にワクワクする体験でした。そんな非日常感のある体験が、ゆくゆくは勉強にもつながっていくものなんです。
2つ目は、海外との繋がりづくりです。企業とも連携しながら、親子での留学を後押しするような事業を始めたいと思っています。期間は短くてもいいから、比較的安全なところに留学できるようにして大人も一緒にいろんな体験ができるといいですね。
3つ目は、子ども達への表彰です。順位づけることではなく、子ども達に小さな成功体験を積んでもらうことが目的です。頑張ったことを承認する場にしたいなと思っています。
マネ:プログラミング教室であれば、タイピングの速さが早い子を表彰したり、いくつかのステージを設けて、そのステージに達した子を表彰したりします。それぞれの教室の特徴に応じて、いろいろな評価軸を設けていますね。
ワンチームとして、ともに子どもの成長を支えていく
ーー 最後に、教室を利用されている保護者の方や、現在利用を検討されている保護者の方に向けて、メッセージをお願いします。
代表:私たちのことを、「一緒に子育てをするチーム」として捉えていただくといいかなと思っています。理念にある通り、子どもの成長をミッションとしてやっているので、そのためには褒めることもあれば、ときに彼らを注意することもあります。
保護者の方と同じ立場にいる1つのチームとして見てくれると、NPO法人FLOWはよりお子さんの役に立てると思います。
これまでにもいろんな子どもと関わってきた経験があるので、悩みがあったらなんでも聞いてもらいたいです。「お子さんの成長に寄り添いたい」と思っているスタッフとともに、一緒にお子さんの成長をサポートしていきたいと思っています。
マネ:そうですね。文章だけでは伝わり切らない部分があると思うので、少しでも興味を持たれたら、まずは教室に足を運んでもらえたら嬉しいです。